デコンボリューションのアルゴリズムについて
光学顕微鏡の光学的特性は既に十分に解析され、結ばれる像は数式で表現できるようになってきています。顕微鏡画像にはピントの合っていない部分に起因するボケ (微小な光点の広がり) が見られますが、このボケも同様に数式化できるようになリました。
ボケを表す数式を 「点像分布関数」 (Point Spread Function、PSF) と呼びますが、この PSF の数式を逆向きにして、元の画像 (ボケのある画像) のデータに適用することで、画像内のボケをソフトウェア的に除去する処理を、「デコンボリューション」 (逆行畳み込み演算) 処理と呼んでいます。
デコンボリューションは次の2つのカテゴリに分かれ、それぞれのカテゴリに様々なアルゴリズムがあります。
- 「ボケ取り」アルゴリズム: No Neighbors、Nearest Neighbors、減算法
- 像復元アルゴリズム: Inverse filter、Non-Blind デコンボリューション (Measured
PSF: 実測 PSF)、Blind デコンボリューション (Adaptive PSF: 適応型 PSF)
処理速度と品質 (定量性) のかねあいで、これらのアルゴリズムの中から最適なものを選んで使用して頂くことになります。
No/Nearest Neighbor (無近傍/最近傍):
No/Nearest Neighbor (無近傍/最近傍) アルゴリズムは、1枚の画像スライスのボケを除去する処理を行ないます。
Zスライス画像の中の焦点が外れた部分が、収集した隣接スライス画像のボケのあるバージョンに等しいという単純な推測に基づき減算的なアプローチを使用します。
これらのアルゴリズムはノイズが少なく、シグナル・ノイズ比が高い画像に適用した場合に特に有用で、処理は最も高速ですが、処理結果画像は精度が低いため定量に不向きです。
Inverse Filter (インバースフィルタ):
Inverse フィルタまたは Wiener フィルタは、入力画像を PSF (点像分布関数) で除算することによりフーリエ空間で実行されるワンステップの画像処理です。
このアルゴリズムは、理論的 PSFまたは実測 PSF (measured PSF) を使用し、顕微鏡画像から大部分のボケを取り除く、高速で効果的な方法です。
画像のノイズは、処理中に、調整可能なスムージング機能を通して低減されます。
処理結果はかなり高品位で、No/Nearest Neighbor アルゴリズムより概して良い結果が得られ、特にXZ平面とYZ平面が良好です。処理結果の精度は Blind 等には劣ります。
Non-Blind [非ブラインド (Fixed PSF/Measured PSF: 固定PSF/実測PSF)]:
Non-Blind (非ブラインド) デコンボリューションは、理論的 PSF、つまり実測 PSF の画像 (measured PSF、固定 PSF、蛍光ビーズの画像) を必要とする、強制的 (constrained) で反復的なアプローチです。
このアルゴリズムは AutoQuant の広く知られた Adaptive Blind (適応型ブラインド) アルゴリズムと同じく、統計的で計算された手法に基づいており、ノイズを扱う際の優れた特性と柔軟性を持っています。
しかし、最初に与えられた実測 PSF は正確であるとみなされ、デコンボリューションの処理中に修正されません。
Non-Blind は、良質な結果と定量分析を、処理時間とバランスよく提供します。処理結果は定量可能です。
備考:Non-Blind デコンボリューションで実測PSF画像を用いる場合、デコンボリューション処理対象の画像データと実測 PSF 画像が全く同一の光学条件で撮影された画像である必要があります。
その確認のため、デコンボリューション処理対象の画像のみならず、実測 PSF 画像にも撮影時のパラメータを必ず入力する必要があります。
3D Blind [3Dブラインド (Adaptive PSF: 適応型 PSF)]:
AutoQuant の 3D Blind (3Dブラインド) デコンボリューションアルゴリズムは、今日市場で入手できる最も強力で統計的に正確なデコンボリューションアルゴリズムです。
本アルゴリズムは、最尤法 (Maximum Likelihood Estimation) と呼ばれる統計手法と強制的 (constrained) で反復的な手法を使用します (処理中にPSFを自動的に修正します)。
実測PSF (measured PSF) を必要とせず、その代わりに入力された3D画像データセットから、反復処理によって実際のPSFと可能な限りボケを除去した画像を復元します。
つまり、シグナル・ノイズ比が低い環境であっても、様々な手法で撮影された顕微鏡画像に対応してボケ除去を行なうということです。処理結果は高精度であり、定量可能です。
2D Blind (2Dブラインド):
2D
Blind (2Dブラインド) デコンボリューションは顕微鏡と画像についてのパラメータ情報を必ずしも必要としない、2Dデータに適用できる適応的な手法です。
2D Blind デコンボリューションは反復処理によって画質を改善することで動作し、タイムラプス画像セット、個々の色成分チャンネルまたはモノクロ画像で働きます。
2D Blind デコンボリューションはサブピクセル解像度レベルで画像内の特徴物を復元でき、ほとんど全ての2D画像に適用可能です。
2D Blind Interactive (2Dブラインド 対話式):
2D
Blind Interactive (2Dブラインド 対話式) は、AutoQuant のパワフルな 2D Blind デコンボリューションアルゴリズムを単一画像のボケ除去に使用します。
顕微鏡や画像についてのパラメータ情報の入力は全く不要です。
対話型のユーザインターフェースを使用して、ステップ・バイ・ステップで試行しながら処理したいときに使用します。